夏の日、
身体から剥がれ落ちかけている古い皮膚のような雪駄をぶら下げ、陽炎の立つ道を行く。
汗で湿った鼻緒を通してのみ感じる違和感だけが現実味を持つ。
そんな道行きでふいに出会ってしまった、無自覚に美しく儚い生き物。
妬ましいまでに奇麗な青いとんぼをさ、夏の雪駄できりきりと踏みつぶした北原白秋の心持ちは理解できんでもないなぁ。
とかね、思います。
現実から切り離されたかのように、眼前をひらりと舞うその姿の中に命の薄さを見てしまったんだろうな。
肉体と精神をつなぐ何か、とか。
現実世界に両足で立っているにもかかわらず感じでしまう浮遊感、とか。
なんかそんな感じのさ、夏の盛の境の中で曖昧になってしまう不安定な、些細な事でどうにかなってしまうような、そんな心許ない何かに自分の命の薄さを感じてしまったんだろうな。
自分の命が薄けりゃ自分以外の命が薄くなるのも道理だものねぇ。
まぁ、もちろんそれを踏み潰した己の中に、強い嗜虐があることは否めませんがね。
今日の本は北原白秋の『北原白秋詩集』です。
なーんか学生の頃はよく白秋の詩をめくっていたような。
白秋の幻想的な詩がねそのときの気分によく合ったんでしょうな。
今でもたまーに読みたくなります。
詩って基本さ、青い工作じゃん。
書き手の、読み手の、その青さを受け入れる事のできる人の為のものじゃん。
平和でいいよね。
平和でさ。